認知症になると物事などの記憶を忘れてしまいますが、それには順番があります。
忘れた場合の内容について理解しておくことで、早期発見・治療に繋がり結果として進行を遅らせることも可能です。
この記事では、多くの認知症患者さまと関わらせていただく博友会が、認知症により忘れる順番について解説します。
専門用語を使わず、具体的に説明するため、思い当たることが無いか確認しつつご覧ください。
目次
認知症により忘れる順番
認知症で忘れる原因は、中核症状による「記憶障害」と「見当識障害」があります。通常、記憶→見当識の順番で忘れるとされていますが、個人差があるためあくまで一般論です。
症状につき忘れる内容が増えていくため、それぞれの段階の特徴を押さえておくことで、早期発見・早期治療に繋がります。
次の見出しで記憶障害で忘れる順番について解説し、その次に見当識障害について解説しますのでそれぞれ見ていきましょう。
記憶障害により忘れる順番
記憶障害がある場合は、近い記憶から忘れる傾向にあります。
- 即時記憶
- 近時記憶
- 遠隔記憶
- エピソード記憶
- 意味記憶
- 手続き記憶
1.即時記憶
即時記憶が低下すると数十秒から一分程度の内容を忘れてしまいます。
初期段階では今日の日付や、物を置いた場所がわからなくなることも多く、何度も同じ行動を繰り返してしまうこともあります。
症状が進むと、だんだんと昔のことを思い出せなくなる症状です。
2.近時記憶
近時記憶が低下すると数分〜数日間と、即時記憶よりも長い期間のことを思い出せなくなります。
具体的には、朝食の内容や今日の予定など、直近の情報を忘れてしまいます。そのため、予定通りの行動が取れなくなるケースが多いです。
この段階では、認知症発症前の記憶は残っていることが多く、昔の体験などはすぐに思い出せます。
3.遠隔記憶
長期記憶の低下とは、数ヶ月単位で覚えている筈の記憶を忘れてしまうことです。
具体的には、家族や自分の名前を忘れてしまうなどといった内容です。症状が進むと、配偶者がいた事実や子どもがいることなど、本来忘れないようなことも忘れてしまいます。
4.エピソード記憶
エピソード記憶の低下とは、自分が行った経験を丸ごと忘れてしまうことです。
認知症の症状として代表的に言われるご飯を食べたことを忘れる、数年前に引っ越した記憶が無くなり自分の家では無いと言うなどの症状が現れます。
5.意味記憶
意味記憶の低下とは、ものや言葉の意味そのものを忘れてしまうことです。
ものの名前を思い出せないため「あれ」や「それ」などの表現は極端に増えることがt口調です。
そのため、意思疎通が取りにくくなりストレスや不安感に繋がることもあります。
6.手続き記憶
手続き記憶の低下は、無意識のうちに記憶していることを忘れてしまうことです。
具体的には、自転車に乗る、トイレを流すなどいわゆる体が覚えていると言われる内容です。
手続き記憶が低下すると日常生活を送ることが困難になり、自宅での介護も難しくなるケースが多いです。
見当識障害により忘れる順番
見当識障害では、以下の順番で忘れる傾向にあります。
- 時間
- 場所
- 人物
1.時間:今何時なのか、何日なのかがわからなくなる
時間の見当識障害は、日時や季節がわからなくなります。
真冬なのに軽装で過ごしたり、病院に行く直前までパジャマだったりと状況に合わせた行動が取れなくなることが特徴です。
日常生活に支障が出やすい部分なため、日頃から家族と一緒にカレンダーを確認する、予定がある日は何度か声掛けをしてもらうなど、見当識を失わないための行動が大切です。
2.人物:介護者など関わる人物が誰だかわからなくなる
人物の見当識障害は、身近な人の顔や名前がわからなくなります。
症状が進行すると、自分自身が誰だかわからないこともあり、強い不安感やストレスを感じることも多いです。
不安感を覚えた時は、焦らずに自分のペースでコミュニケーションを取ることを心がけましょう。どうしても不安な場合は病院に相談するのも有効な手段です。
3.場所:自分のいる場所がどこだかわからなくなる
場所の見当識障害は、今自分がいる場所や道順などがわからなくなります。
道順がわからなくなることから、自宅へ帰ろうとしても迷ってしまう、目が覚めた時自宅であるという認識ができないことから外に出てしまうなど、徘徊のリスクが高くなる状態です。
最悪の場合、命に関わることもあるため、かんたんスマホなど連絡を取りやすいツールを持っておく、連絡先や名前が記載されたメモを持ち歩くなど事前の対策が重要になります。
認知症の進行を遅らせるために
認知症は残念ながら完治させられないものです。しかし、治療や日常生活でポイントをおさえながら生活すると、進行を遅らせられます。
予防目的としても有効なのが「食事の見直し、運動習慣の確立、社会との接点を持ちコミュニケーションを取る」ことなどです。
詳しくは以下の記事で解説しておりますので、合わせてご覧ください。
まとめ
認知症は進行型の病気です。残念なことに、現代医療では完治ができず、進行を遅らせることしかできません。
そのため、今回紹介したように「今日行ったことが思い出せない」「時々道順がわからなくなる」などの症状が出た場合はできる限り早く受診し、治療を受けることをおすすめします。
早期発見・早期治療ができれば、認知症の方も生活で不便を感じにくく、家族と一緒に暮らすことも十分可能です。
症状が現れた時、強い不安を感じることもあるかと思います。夜中に不安を覚え、誰にも相談できず不安を抱えたまま布団で眠れないなどお困りのことがありましたら私たち博友会にご相談ください。
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