「最近家族が同じ話をしている…歳だし物忘れも多いと言っているけど、認知症なのでは?」
親御さんと共に生活している方に多く見られるシーンです。しかし、認知症かの判断がつかず様子見で放置してしまう方も多くいらっしゃいます。
認知症は進行する病気です。早めに受診して治療を受ければ、進行を遅らせることができます。
そこで今回は、認知症患者様と多く関わらせていただく博友会が、認知症について解説します。まず記事を読んで、ご家族に当てはまる部分が多ければすぐ専門医にご相談ください。
目次
認知症とは?物忘れとの明確な違い
認知症は、脳の機能が低下することで引き起こされる一連の症状です。主に認知機能(記憶、判断力)が低下して、社会生活に支障をきたしている状態のことを指します。
加齢によるもの忘れと混同されることもありますが、もの忘れと認知症には明確な違いがあります。
項目 | 加齢による物忘れ | 認知症 |
---|---|---|
程度 | 軽度の記憶喪失 | 重度の記憶喪失と認知機能の低下 |
影響範囲 | 特定の状況や瞬間に限定される | 日常生活全般に影響を及ぼす |
進行性 | 進行しない、または非常にゆっくりと進行 | 急速に進行し、症状が悪化する |
日常生活への影響 | 自立した日常生活が可能 | 日常生活の自立が困難になる |
治療 | 基本的に治療は必要ない | 薬物療法や非薬物療法が必要 |
一口に認知症と言っても、様々な種類があります。次の項目で解説しましょう。
認知症の種類と主な症状・原因
認知症の代表的な種類は大きく4つあります。ご家族の方に当てはまる症状が無いか見ていきましょう。
※認知症の原因は完全には解明されていません。しかし、現在の研究段階で考えられている通説を紹介しています
1.アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、認知症の中でも最も多い種類の認知症です。
主な症状は記憶障害、思考力の低下、判断力の喪失、日常生活の自立度の低下など。
原因としては、アミロイドβタンパク質の蓄積、異常なタウタンパク質の蓄積によって脳にダメージを与えることが主な原因と考えられています。また、遺伝的要素や生活習慣も関与しているケースもあります。
2.レビー小体型認知症
レビー小体型認知症はアルツハイマー病に次いで多い認知症です。
主な症状には、視覚幻覚、パーキンソン病様の運動症状(手足のこわばり、小刻み歩行など)、認知機能の変動があります。
原因は、レビー小体と呼ばれる異常なタンパク質の蓄積が神経細胞の機能を阻害し、損傷を引き起こすことと考えられています。
3.前頭側頭葉変性症
前頭側頭葉変性症 は前頭葉や側頭葉の変性が特徴で、行動や言語の問題が主な症状です。初老期に発症することが多く、脳の一部分が変化するため、行動障害や認知機能障害に加え、人格変化や失語症などが起こることが特徴の認知症です。
原因は脳の前頭葉および側頭葉の神経細胞が異常に蓄積することと考えられていますが、なぜこのような変化が起こるのかはわかっていません。
4.脳血管性認知症
脳の血管が損傷を受けることで発症します。脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因で、急激な症状の出現や徐々に悪化する症状があります。
主な症状は記憶障害、見当識障害(日時や曜日、場所がわからない)、実行機能障害(段取りがうまくできない)など。
脳の血管が損傷し、脳への酸素や栄養の供給が不十分になることが原因です。脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が関与しています。
これらの症状や脳の状態から専門医が判断し、認知症と診断します。診断基準についても軽く触れておきましょう。
認知症の診断について
一般的にはWHOのICD-10、アメリカ精神医学会のDSM-Ⅳ-TRの基準で診断することが多く、以下を満たす状態を認知症と呼びます。
- 記憶障害を中核に、失語、失行、失認、実行機能障害のいずれかがある
- 原因となる脳の器質的疾患がある(脳に原因がある)
- 症状が持続する
- 認知障害により社会生活や日常生活に支障をきたす
- せん妄など意識障害がない
しかし、あくまでこれは基準です。隠れた精神疾患や、別の疾患が原因であるケースも十分にあるため、必ず専門医にご相談ください。
では、認知症と診断された後にはどのような治療があるのでしょうか?次の項目で解説します。
認知症の治療方法
残念ながら、2023年4月現在認知症を完治させる治療方法は確立されていません。しかし、進行を遅らせる治療は行われています。
認知症の治療方法は主に以下の2つに分けられます。
- 薬物療法
- 非薬物療法
それぞれ見ていきましょう。
薬物療法
認知症の進行を遅らせることを目的とした薬物療法があります。
アルツハイマー型認知症では、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン)や、NMDA受容体拮抗薬(メマンチン)が使用されることがあります。
非薬物療法
認知症の症状に対処するために、薬物療法以外の方法が用いられます。
例えば、リハビリテーション、認知症ケア、認知機能訓練、家族や介護者への支援、運動療法、栄養指導など。音楽を聴く、園芸を行うなどの作業療法も多く行われる治療法です。
まとめ
今回は認知症について解説しました。最後にポイントを振り返りましょう。
- 認知症とは主に認知機能(記憶、判断力)が低下して、社会生活に支障をきたしている状態のこと
- 認知症の種類は「アルツハイマー型」「レビー小体型」「前頭側頭葉変性症」「脳血管性」が代表的
- 治療方法には「薬物療法」「非薬物療法」がある
あなたの身近な人と接して「認知症かも?」と思ったら、早めの受診をおすすめします。認知症は進行する病気です。早期の段階で治療することで、進行を遅らせることができます。
ご本人のためにも、あなたの介護の負担軽減のためにも、一度専門医にご相談ください。
また、認知症への正しい理解は適切な介護にも繋がります。博友会では認知症に関する情報を多く発信していますので、ぜひご覧ください。
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