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キャンパスは立入禁止、実家にも帰れず…大学生の1割が「コロナうつ」になっている
7月以降、3カ月連続で国内の自殺者数が増加している。7月の自殺者は1818人で前年同月と比べて25人増、8月は1854人で251人増、9月は1805人で143人増だった。
この背景には新型コロナによる生活の変化によるストレスがあると考えられる。「コロナうつ」という言葉があるように、外出自粛や先行きの見えない経済状況、在宅勤務などが心の負担となり、人々の心をじわじわと蝕んでいったのだ。
特に大学生、それも新1年生はコロナによって大きな影響を受けた。新1年生の多くは入学と外出自粛期間が重なったため、9月になるまで半年間、大学に一度も登校できなかったくらいだ。オンラインで授業が行われていたものの、地元以外の大学に進学した学生は、身寄りのない土地で新しい友人も作れず、アルバイトもできず、1日の大半をひとり家の中で過ごすことになってしまった。
こうした状況は学生たちの心に大きなストレスを与えていたが、これまであまり可視化されなかった。そのため、社会からのフォローもなく、事態は水面下で悪化していったと考えられる。
それを明らかにしたのが秋田大学が8月28日に発表したアンケート調査報告「全国緊急事態宣言による自粛が及ぼす大学生のこころとからだへの影響」だ。これによれば、回答者のなんと1割以上に中等度以上のうつ症状が見られたという。
「秋田大学で実施した調査では、重度を除く中等度のうつ症状がアンケート回答者の7.8%に見られました。この数字はかなり深刻です。
新型コロナが発見された武漢でも医療従事者1257人を対象に、私たちが用いたのと同じ評価指標による調査が1月下旬から2月初旬にかけて行われましたが、中等度のうつ症状が見られたのは回答者の8.6%でした。私たちが学生への調査で得たのと近い数字です。
「それに比べれば、大学生はただ大学に行けないだけで大した影響は受けていないだろうと思われがちです。むしろ部活や飲み会でクラスターが発生したことを伝える報道によって注目されることの方が多いかもしれません。
しかし大半の学生は真面目で、外出自粛、大学キャンパスへの入構禁止などの措置に素直に従っています。秋田県では6月19日に県外移動自粛措置が解かれましたが、それでも学生はほぼ全員、少なくとも夏休みまで実家に帰りませんでした。地元で親や祖父母に感染させてしまうことを心配したのです。その結果、学生たちの孤立する状況が長く続きました。
人は孤立して、家族や知人などコミュニティからのサポートも得られないと、健康状態、精神状態が悪化する。これは先行研究で明らかにされている既知の事実ですが、私たちの調査でも、同じ傾向が浮き彫りになっています」
大人であればもう少し自分で動けたかもしれません。子供であればもう少し守ってもらえたでしょう。不幸にも大人と子供の間という微妙な年齢である大学生が最も厳しい状況に置かれてしまった。大学では、われわれ教員が経験したことのない事態が密かに進行し、1割もの学生がうつ状態に陥ってしまったのです。今後も何とか工夫をして対面授業を続けてほしいと考えています」
文春オンラインより
実際に人と会うことが、うつ病予防に SNSで孤独感促進も
世間に大きな衝撃を与えた、相次ぐ芸能人の自殺。死を選んだときに本人が何を思っていたのかはそれぞれだろうが、多くの人が最大の要因とみなすもの──それは「孤独」だ。精神科医の樺沢紫苑さんが解説する。
「過疎地でひとり暮らしをするような物理的な孤独だけでなく、心理的な孤独も大きなファクターです。たとえ家族と一緒に住んでいても、交流がなく、愛されていると思えなければ孤独です。
芸能人の自殺も“心の孤独”が一因になっている。有名になったりお金持ちになったりして社会的な地位が上がると、本心を打ち明けて相談できる人が少なくなります。誰にも本音を話せないことも、心理的な孤独感が増すのです」(樺沢さん)
SNSが普及した現在は、誰もがせっせと他人とコミュニケーションを取っているように見える。しかしSNSには、自殺を食い止めるほど孤独を癒す力はない。
「ある研究によると、実際に人と会う機会が多いとうつ病を予防できた一方、SNSのコミュニケーションでうつ病を予防する効果は確認できませんでした。SNSは、リアルのコミュニケーションにはかなわないのです」
むしろ、SNSは若年層の孤独感を促進するとの声もある。これは、人間の感情と脳の発達に起因する。脳科学者の杉浦理砂さんはいう。
「人間は、脳の中心部にある『扁桃体』が感情を司り、理性を司る『前頭前野』がそれをコントロールすることで、感情に振り回されずに生きています。しかし、思春期は前頭前野が未発達な一方、ネガティブな感情に反応する扁桃体は成熟しています。このため若い世代は、SNSでネガティブなメッセージを受け取ると理性が働かず、感情をうまくコントロールできなくなり、衝動的になりやすいのです。
この時期は特に仲間意識が強く共感力が高いため、仲間から疎外されたときのストレスは大人の想像を絶するほど大きく、強いショックを受けます。大きな孤独感を抱え、そのまま自殺してしまうことがあるのです」(杉浦さん)
幼少期の生育環境や家族、知人らの自殺経験も重要だ。
「特に、親が自殺していると、子供の自殺率は5倍も上がるといわれています。“大変なことが起きたら自殺する”という選択肢が植えつけられ、自殺が連鎖しやすくなるのです」(樺沢さん)
NEWSポストセブンより
家族の「コロナ後うつ」察知するためのチェックリスト
新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言下の春先から「コロナうつ」の深刻化が叫ばれてきた。それから数か月が経過し、自粛ムードが明けつつあるなかでも、うつ症状になる人が増えているという。では、もしも家族が「コロナ後うつ」に襲われたなら、どう向き合えばいいのか。
うつ病に詳しい町沢メンタルクリニックの町沢静夫医師は、「早期発見が肝心」だと言う。
「小さな兆候を見逃さず、異変をいち早く察知できれば、それだけ家族は対応もしやすくなります」
〇家族の「コロナ後うつ」チェックリスト(監修/町沢静夫医師)
- それまで大好きだった事柄に興味を失った
- 食欲がない or 食べすぎる
- 「どうでもいい」など、無気力な言葉を口にするようになった
- 集中力が散漫。ぼーっとする時間が増えた
- メールやLINEの返事、電話の折り返しが以前より遅くなった
- よく眠れない or 眠りすぎる
- 自分を責めることが多くなった
- コロナ関連のニュースを見るとソワソワと落ち着かなくなる
- 「3密」に対して過敏になりすぎる
- 「この先どうなるんだろう」と不安を吐露することが増えた
日頃の家族の言動と照らし合わせて、10項目のうち3つ以上当てはまっていたら、コロナ後うつの可能性があるという。
「うつ症状が疑われる場合は、近くの専門クリニックを気軽に訪ねてください。当人に病気を伝え、病院に連れて行くのは難しい問題ですが、その際は『少し疲れているみたいだから、お医者さんに相談してみようか』と優しく声をかけてあげてください。精神科というと抵抗感のあるかたも多いので、『心療内科』と言ってお連れするのがいいと思います。
家族は日頃から『会話』することを忘れないようにしましょう。人と話すことがストレス緩和の第一歩です。近くの公園まで一緒に散歩するとか、体を動かすこともいいでしょう」(町沢医師)
相手を否定しないことも重要だ。精神科医の香山リカ氏は、もし家族にうつ症状が出たら、「それが当たり前」というスタンスで臨むべきだと話す。
「異常だという認識で接すると症状は必ず悪化します。コロナ以降、私たちの生きる世界はガラリと変わりました。不調をきたすのが普通の反応です。『がんばろう』も禁句。
情報から身を離すのも効果的です。WHO(世界保健機関)もコロナ関連のニュースに触れるのは1日2回程度にした方がいいとしています。感染者の増減や、どこでクラスターが発生したといった情報に一喜一憂すべきではない。テレビを消すのもひとつの手です」
素早く見つけ、正しく対処する。それが家族を守ることにつながる。
NEWSポストセブンより
VRとAIによるうつ病などの精神疾患を対象としたデジタル診断・治療法の開発が、東京都の創薬・医療系ベンチャー育成支援プログラム「Blockbuster TOKYO」に選出!
〜新型コロナウイルスの影響で急増するうつ病に、VRを活用したデジタル治療を〜
株式会社ジョリーグッド(東京都中央区、代表取締役:上路健介)は、東京都が主催する創薬・医療系ベンチャー育成支援プログラム”Blockbuster TOKYO”(以下、本プログラム)の2020年度の選抜プログラムに選出されました。
ジョリーグッドは、うつ病患者を対象に、世界でも注目の高まっているソフトウェアを使ったデジタル治療「デジタルセラピューティクス(DTx)」の研究を開始しています。ジョリーグッドは、うつ病の新しい治療法として、認知行動療法をベースにしたDTxである「認知行動療法VR」の普及を目指します。
Blockbuster TOKYOは、東京都が主催して創薬・医療系ベンチャーの成長を加速させる各種支援の提供を行うプログラムです。本プログラムは研修プログラムと選抜プログラムの2つのプログラムから構成されており、研修プログラムでは起業・ベンチャー経営や資金調達などベンチャーに関する知識、研究開発・事業提携等に必要な知識を身に付けることができるセミナーを月に1回程度実施しています。選抜プログラムでは、より具体的な事業計画等を有するチームを対象に創薬、知財、臨床開発、マーケティングなど、分野ごとに精通したメンターによる専門的な支援や、必要な人材とのマッチング、研究開発に資するデータ取得等の支援、事業会社や投資家・支援機関とのマッチング等の実践的な支援を実施します。
■新型コロナウイルスの影響で更に増加するうつ病
精神疾患はわが国の5大疾病のひとつであり、患者数は約420万人と最も多いです。その中でもうつ病は127万人と最も多く、1年間の社会経済コストは年間3兆900億円に上ります。また、コロナ禍による外出自粛や経済低迷は、人々の心に大きな不安を与えています。8月の日本の自殺者数は1849人で、前年に比べて246人と大幅に増加。感染拡大によるストレスからうつ病や自殺に至る危機については、日本以外の国でもその数が顕著に増えており、国連が警鐘を鳴らしています。
■認知行動療法とは
認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapies; CBT)は、認知に働きかけて気持ちを楽にする精神療法(心理療法)の一種です。認知は、ものの受け取り方や考え方という意味です。ストレスを感じると私たちは悲観的に考えがちになって、問題を解決できないこころの状態に追い込んでいきますが、認知療法では、そうした考え方のバランスを取ってストレスに上手に対応できるこころの状態をつくっていきます。うつ病治療において、認知行動療法は第一治療選択のひとつで、軽症の状態に対しても適用が推奨されており、幅広い対象に適用が可能です。
うつ病の特徴として、活動が低下し、自室等に引きこもり、反芻を繰り返すことでネガティブな気分が悪循環するという傾向があります。認知行動的な観点に立てば、うつ状態では様々な考えや行動から、ポジティブな感情を体験する機会が邪魔されているとも捉えられます。
■うつ病患者に向けた認知行動療法VR
認知行動療法VRは、従来の認知行動療法の構造をベースに、セラピーの中で行う考え方や場面の説明をVR化します。対話で自分の行動を客観的に学習(認知)させ、行動変容を促す従来の方法では、場面イメージの齟齬や、セラピストのスキルへの依存などの課題がありました。VRで様々な出来事や状況を当事者体験することで、場面イメージの齟齬を無くし、短時間で質の統一されたセラピーの実現が可能です。
また、AIによる機械学習を重ねることで精度を向上させ、VRによるうつ病評価とその疾患レベルに対する「VRコンテンツの調合」を自動化することを目指します。
新型コロナウイルスや、様々な理由で通院が難しい患者に対し、クラウドで医師の治療計画や診断を管理できるシステムを開発。通院しなくても、デジタル治療の処方を受けることが可能となります。
PR TIMESより